なぜAI導入と内製化に壁があるのか?IPAの2025年ソフトウェア動向調査解説
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現代のビジネス環境において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やソフトウェアの内製化は、企業の競争力を左右する重要なテーマとなっています。しかし、急速な技術の進歩に対して、現場では人材不足や既存システムの制約など、さまざまな課題に直面しているのが実情です。
本記事では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「2025年度ソフトウェア動向調査」(2026年3月発行)に基づき、国内企業におけるソフトウェア開発の最新動向を解説します。
調査概要:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」について
データの内容に触れる前に、今回の調査の概要を簡単に説明します。本調査は、国内のユーザー企業255件、ベンダー企業107件の合計362件を対象に実施されました。企業のIT部門やソフトウェア開発の最前線で、現在どのような取り組みが行われ、どのような技術が導入されているのかを可視化したものです。
DX推進と生成AIの導入状況:ユーザー企業とベンダー企業の比較
企業のDX推進は、もはや一部の先進的な企業だけのものではありません。調査結果を見ると、全体の約7割にあたる69.1%の企業が「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」と回答しています。
図表1:DXの取組状況

一方で、近年注目を集める「生成AI」の導入状況については、企業間で進捗に差が見られます。「全社で導入している」と回答した割合は全体で41.4%ですが、属性別に見るとベンダー企業が43.9%、ユーザー企業が40.4%となっています。また、ベンダー企業では「事業部門・部署ごとに導入している」割合も35.5%に上り、テクノロジーを扱うベンダー側が先行してAI活用を進めている様子が伺えます。
図表2:生成AIの導入状況

ソフトウェア内製化の現状と「人材確保」の壁
ユーザー企業にとって、システム開発のスピード向上やノウハウの蓄積を目的とした「内製化」は重要な戦略です。しかし、内製化を進める上では明確なハードルが存在します。
ユーザー企業に対して内製化の課題を尋ねた設問では、「人材の確保や育成が難しい」という回答が78.5%と突出して高くなっています。次いで「新しい技術への対応が難しい」が46.2%、「内製化には利点も欠点もあるため、判断が難しい」が41.3%と続きます。
図表3:内製化の課題

IT人材の不足は社会的な問題となっていますが、内製化を成功させるためには、単に外部から人材を採用するだけでなく、社内での継続的な育成体制の構築や、新しい技術をキャッチアップできる環境づくりが不可欠であることがわかります。
レガシーシステムとベンダーロックインがDXに与える影響
新しい技術の導入や内製化を進める上で、既存の古いシステム(レガシーシステム)が障害となるケースは少なくありません。
調査によると、レガシーシステムが「DX推進に対する大きな足かせとなっている」と回答した割合は全体で9.1%、「やや足かせとなっている」は28.7%に上ります。合計すると、約4割の企業が既存システムの影響でDX推進に支障をきたしていると感じています。
図表4:レガシーシステムの影響

また、特定のベンダーに依存してしまう「ベンダーロックイン」の状況についても、全体の47.5%が「一部のシステムでベンダーロックインがある」と回答しています。
図表5:ベンダーロックインの状況

その原因としては、「システム間が密結合しており、全体構成が複雑・肥大化しているため、新規ベンダーが参入しづらい」、「特定のベンダーだけが持つ独自規格や独自技術がシステムに組み込まれている」などが上位に挙げられており、システムのブラックボックス化を防ぐための設計の見直しが急務となっています。
開発現場の最新トレンド:アジャイルと生成AIの実装
最後に、ソフトウェア開発の現場における新しい手法の導入状況について見ていきます。
開発工程におけるAIの導入状況、特に「実装(コーディングなど)」のフェーズにおいて、ベンダー企業は「一部の部門・プロジェクトで導入済み」が57.0%に達し、「全社レベルで導入済み」(9.3%)と合わせると6割以上がすでにAIを活用しています。これに対し、ユーザー企業では導入済み(全社+一部部門)の合計が約30%にとどまっており、ここでもベンダー企業が先行している傾向が明確です。
図表6:開発におけるAI導入状況(実装)

また、開発手法の導入状況について確認すると、従来型のウォーターフォール開発が依然として広く利用されている一方で、アジャイル開発やDevOps、ノーコード・ローコードツールの導入も徐々に進んでいます。効率的かつ柔軟な開発体制を構築するために、目的に応じて最適な開発手法を選択する柔軟性が求められています。
まとめ:今後のソフトウェア開発に求められる戦略
本調査の結果から、日本国内の企業においてDXの全社的な推進は着実に進んでいるものの、実行フェーズにおいては「人材不足」と「レガシーシステムの制約」という2つの大きな課題が存在していることが明らかになりました。
今後のソフトウェア開発において競争優位性を保つためには、以下の点が重要になります。
- 生成AIをはじめとする最新テクノロジーの積極的な試行と業務への組み込み
- 内製化を支えるための、社内人材の育成プログラムの充実
- レガシーシステムからの脱却を目指した、疎結合なシステムアーキテクチャへの見直し
自社の現状を客観的に把握し、適切な技術と手法を選択することで、これらの課題を乗り越え、ビジネスの変革を加速させていくことが期待されます。
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参考資料: